昔の名前で出ています。

「昔の名前で出ています」と聞くと「燃える男の赤いトラクター」を一緒に思い浮かべるのは私だけかな。
昔はこんな名前だったけど、今はこんな名前に替わっているということが時折ある。
そのため、話が通じず険悪な雰囲気になったり、汗をかきながら説明する羽目になる。

今回はイチゴで大問題になるイチゴ炭疽病菌の学名にフォーカスしてみる。
以下の表のように名前が変遷しているを理解していただけるかと思う。

さらに話をややこしくしているのは、イチゴ炭疽病菌は子のう菌類と呼ばれ、これらの菌類は不完全(無性)世代と完全(有性)世代があるのが特徴である(下記表参照)。

おそらく炭疽病菌を発見した際に、不完全世代のものを見つけ、名前(学名)をつけ、その後に完全世代のものを再発見、この際に、不完全世代と完全世代とでは性質が全く異なっており再度命名。
近年の分析技術の進歩で同じものと思っていたものに違いがあるとわかって、再再度命名。
イチゴ炭疽病菌は上述したように不完全世代と完全世代では性質が異なる。

サカグチは、ツバス⇒ハマチ⇒ブリと成長とともに名前を変える出世魚(しゅっせうお)と同じだと無理やり理解した。
成魚に向かうほど脂ののりがよくなり、旨みも増すような……。

イチゴ炭疽病菌は不完全世代の時に病原性があり、最も日本の生産者を困らせているのはColletotricum fructicola.

しかし、学術上は完全世代の学名が優先するという規約があるということなので、イチゴの炭疽病菌を表すのは完全世代のGlomerella cinglata

日本のイチゴの栽培上、実用上さす炭疽病菌の学名は悪さをしているとされるのはColletotricum fructicolaであることを繰り返し述べておく。

「燃える男」と聞くとみなさんは,
1.「赤いトラクター」のCMの演歌歌手
2.「絶好調」とよく言っていた元野球選手、
3.「1・2・3ダアー」と言っていた亡くなってしまったが元プロレスラー
いずれかな?

追伸:イチゴ炭疽病菌の分類に詳しい方がいれば、詳細情報いただけますと幸いです。

関連:2021年 Dr.サカグチバックナンバー「潜んでいるよ」も併せてご連絡ください。
https://www.miyoshi-agri.co.jp/know-enjoy-p/dr/%e6%bd%9c%e3%82%93%e3%81%a7%e3%81%84%e3%82%8b%e3%82%88/

 
参考文献
遠藤(飛川)みのり. 2018. イチゴ新品種‘恋みのり’ が有する炭疽病抵抗性.-Colletotrichum gloeosporioides 種複合体の菌種による差異の一例. 植物防疫 72(4) :236-240. 
熊倉 直祐. 白須 賢. 2016. 比較ゲノム解析が拓く炭疽病菌の病原性とその進化. 植物の生長調節 51(2) : 144-147.
野口裕司.1991. 日本におけるイチゴ炭疽病抵抗性育種の現状と方向. 1991年度イチゴセミナー紀要 : 55-62.
白須賢. 2018. 比較ゲノミクスをベースにしたイチゴ炭疽病菌Colletotrichum gloeosporioides種複合体の解析. 植物防疫72(4) : 232-235.
椿啓介. 1982. 不完全菌類と完全世代. 化学と生物 20(10) : 656-662.
農業生物資源ジーンバンクホームページ. https://www.gene.affrc.go.jp/databases-micro_approved_cl.php