年末が近づいてくると、今年のヒットしたものは!というのが話題になる。
たまたま、アニメ部門で鬼滅の刃第2作目も大ヒットというニュースをみて、「そういえば」と思った。
「そういえば」というのは鬼滅の刃の中で重要なアイテムとして「青い彼岸花」が登場する。
鬼たちの大親分が永遠の命を求めて、探しているアイテムである。「青い彼岸花」は巡り合うことが叶わないという設定であるが、本当に叶わないものなのか?
あやうく「青い彼岸花」の話になりそうになったが、ここでは「青い彼岸花」のお話ではなく、お彼岸のころ咲く、「赤い彼岸花」で話を進めたい。
通常であれば、クリスマス、お正月、初詣、お年玉、お餅、センター試験などのニュースが出てくる時期であるが季節はずれの話題ではあるがクリスマスカラーということでお許しを。
どうして彼岸花の話題に挙げたかというと、年配の生産者の方と話していると「彼岸花が咲いてきたからイチゴを定植する」ということをとにかくよく聞く。不思議なくらい聞く。おそらく、SNSのない時代からイチゴをお作りになられている方々で、情報のやりとりなどしている可能性はほぼないと思う。別々の場所で、別々の方々の口々でそういうのである。
私は私で、同僚の一人であるEくんが「ヒガンバナ、ヒガンバナ」と言っていたので、少しは彼岸花に興味を持ってくれたようでちょっとうれしい。
ところで、彼岸花の生育習性に関して、知らないことが多いために、調べてみた。彼岸花はタマネギを小さくしたような球根をもつ球根植物(有皮りん茎)である。通常9月のお彼岸のころに開花し、開花後に葉を地上に出し、翌年の5月中・下旬に葉が枯れ、土壌中の球根で夏を越す。地上部の動きは良く分かったが、土の中の球根の動きがどんなものなのか興味がでてきたので探ることにした。
それぞれの時期で球根を掘り上げ、タマネギのような皮を一枚、一枚剥いていき、成長点のところに達した時に検鏡してみると、冬の低温に遭遇した球根(低温に遭遇しているというのがポイント)では、花芽分化が葉の生育中の4月下旬に始まっている。葉が枯れた後の6月中旬に球根の中で雌ずい形成期になり、「一挙に開花といけへんのかい」とツッコミをいれたくなるようなことが起こる。
というのは6月中旬以降というと地温が高温となり発達が抑制されるのである。この抑制は地温が低下してくると解除され、発達には20℃くらいが適温であり、ヒガンバナは開花するのである。これがちょうど9月のお彼岸の頃。この20℃くらいというのが、イチゴの花芽分化温度とマッチしてくるから面白い。
「そういえば」ここでようやく彼岸花とイチゴが結びついた。この現象を大先輩の生産者の方々は身をもって感じていたということになる。
以前、正確に気温を測定する必要があるというコラムを書いたが、機械のセンサーだけでなく、植物がもつセンサーは非常に正確で、環境をモニタリングしていることが良くわかる。
機械に頼るだけでなく、植物から出される信号を私たちは敏感に感じ取る感性が必要である。
このコラムも6年目に突入。また1年、年を重ねてしまったと感慨にふけってしまいそうになったが、
それよりも更新されないので、もう終わったのかという声も聞く有様。いつまで続くのか、書いているサカグチもわからないが、お付き合いしてくださる人がいる限り書き続けたいと思っている。
ということで、ぼちぼちとですが、今後もお付き合いいただけますと幸いです。
参考資料 日本植物生理学会 みんなのひろば 彼岸花はどうやって季節を知るのですか?
