「心を燃やしている」 by 商品開発担当者

商品開発するということは非常に苦労がある。

漫画・アニメ『鬼滅の刃』の登場人物、煉獄杏寿郎くんは「心を燃やせ」と言う。

彼の登場する何年、何十年、何百年も前から商品開発担当者は代々、想いをつなぎ、心を燃して新しい商品開発に何度も何度も挑んできた。

心が折れそうになること、心が燃え尽きそうになることの繰り返しの中で、ようやくできた数々の商品候補になったものが、すべて商品化されるわけでなない。

また極わずかに販売され、商品になったものが必ずしもヒット商品となるとは限らない。そのため、開発担当者はいろいろな作戦を使ってヒット率をあげる工夫をしている。

今回は、ヒット率をあげる工夫のイチゴの例をあげる。

果実硬度計

イチゴの果実は非常にソフトで傷つきやすい。どうやって収穫すればよいのか、どうやって運んだたらよいのかと悩んでしまう。

そこで、硬いイチゴを作るために登場したのが、硬度計である。(画像:藤原製作所製 果実硬度計KM型)

これにより硬いイチゴの品種開発が格段に進んだと言われる。 

分析機器が発達したことで、果実を硬くする成分も探すことも可能になったし、イチゴ本来が隠しもっている成分、ポリフェノールといった機能性を見つけ出すこともできる。もっと効率的に品種開発を進めるために、MAS(マーカー支援選抜)も検討されている。

確かに、機械の目は正確だ。しかし、人の目はもっとすごい。農研機構で育成された「おいCベリー」はビタミンCが普通のイチゴの1.3倍~1.6倍という機能性の方にフォーカスされている。しかし、果実を置いた時に、果重の重さが果重受け面全体に均等にかかる形のものを選抜しているということを知り、これには私は驚いた。人の目はすごい、開発担当者の鋭い観察力に対して敬意を表したい。

ところで、当然商品開発担当者だけが苦労しているわけでなない。商品開発担当は「売る商品」を作るのが仕事で、商品化が決まったものを生産してくれる人それを営業して販売してくれる人こういった、縁の下の力持ちの方々のお陰で、「売れる商品」に育ててもらい、つまり「ヒット商品」にしてもらう。

ちなみに筆者も「鬼滅の刃」無限列車編を見て、ハンカチ1枚で足らないほど泣いてしまった一人であり、流行りものに影響されやすいのも読者の方にばれてしまったか?

参考文献  Minori Hikawa-Endo. 2020.  Improvement in the Shelf-life of Japanese Strawberry Fruits by Breeding and Post-harvest Techniques.  The Horticulture Journal 89 (2): 115–123. 2020.